芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

カアカア、ちょっとおもやつれして。

 今日の午後一時頃、一か月近く姿を見せなかったカアカアが、いつもの場所、我が家のウッドフェンスの縁に立っていた。心なしかおもやつれした姿だった。

 彼女は先月の九日以来、一度も姿を見せなかった。近くの公園の木に巣を作り、抱卵していたのだった。既に二十日以上の日を経て、ヒナになったのだろう、数日前まで巣の端に立って首を突っ込んだり出したりしていた。ヒナが成長していく楽しみを私も共有できるのだ、ラッキー! 私はワクワクした。

 だが、ここ数日、巣の周辺にカアカアの姿はなく、五・六十メートル先の屋根の上から巣の見張り番をしていた男ガラスも消えていた。いったい何があったんだ? 私は心配で一日に何度も巣の下に足を運んで、じっと見上げていた。

 確かにきょうカアカアと再会したが、子育てに失敗したのではないだろうか? 原因はわからない。でもきっとそうに違いない、私にはそんな悲しい彼女の気持ちが伝わってくる。どこか侘しげな面立ちで、例の甘えたような上目遣いをしている。

 カアカアがご飯を食べ終わって隣家の屋根の向こうに飛び去って消えてゆくまで、私は庭に立ち尽くしていた。