芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

こうして死に近づいていくのです

彼は一日二個のゆで卵を食べている

朝 一個

昼 一個

 

十年前

妻を喪ってから

毎日 朝と昼を自分で作っている 夜はいつも外食だが

 

だから 一日二個の卵の殻をむく

十年一日の如し

きょうまで七千三百個の卵の殻をむき続けて

 

彼は生きて来たのだった つまり

卵の殻をむくことが

一歩 死に近づくことだった