芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

アルファさん 第五夜

 午前二時五十分だった。

 どうしても聞きたいことがあって尋ねた。

「アルファさんってどこから来たの」

「北の国から」

「北と南と、どう違うの」

 ボクは西も東もわからないから、

「西も東もどっちがどうか、わからないけど」

 そう言ってやった。

 アルファさんはにっこり笑った。

「それはね、どこでも……」

 そのあと何を言ったか、もう聞こえなかった。とてもステキな人だ、ボクはたまらなくなって、彼女のくちびるに思わずキスしてしまった! くちびるとくちびるがかさねられる寸前、アルファさんの顔は銀の粉末になって砕け、消えた。