芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

五枚の皿

 これは一見するとミルクだが、ミルクだけじゃない。何か混ざっているのか、いったい何を混ぜたのか、記憶にない。ミルクを片手鍋に注いだはずだ。そんな遠い昔ではない。ほんの数分、いや、ついさっきの話ではないだろうか。

 ここまで灰汁が出るのは、やはり、いくらなんでもミルクだけではないはずだ。温めながらかき混ぜていると、スプーンに白濁した薄皮がまとわりついてくる。それをすくって、指でつまみあげ、じっと観察してみる。すぐに破れそうなくらい薄い皮だが、意外にしっかりとして、指間にぶら下がっている。一応、それを皿に乗せておく。

 ふたたび、ミルクをスプーンでかき混ぜていくが、すぐに薄い皮がまとわりついてくる。それを引き上げ、先程皿に乗せた皮の上に置く。何度も繰り返していると、一枚の皿では足りない。今では、五枚の皿に薄皮が盛られている。