芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

中指のふしぎ

昼のがらす窓をたたくものと

夜のがらす窓をたたいているものとは

過ぎさりゆく中指のものがたりである

ちりひとつなく磨かれた つめあと

まんまるく まん月に折られた かんせつ

がらす窓にもましてとうめいな はだいろ

昼と夜との間に

いくひらともなく これら愛のしるしを残して

いつしか がらす窓をとおり抜け

中指はそっと

中指はそっと

室内の耳もとへささやいた

 

*一九七八年十一月七日の日記帳から。私は二十九歳だった。