芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

親水公園にて その12

 この夏は例年になく暑い日が続いた。それでも真夏日や猛暑日の真昼時、わたくしは毎日親水公園を抜けて芦屋浜まで歩いている。浜の東北端のあずまやから海と空と雲をみつめている。右後方には、入道雲を背後にして六甲山が立っている。炎天下、恍惚としたわたくしにあの女が真正面で向きあっている。笑っている。汗ばんだ背中から滴がひっそり落ちていく。

 その通りだった。

 このまま

 倒れても

 わたくしには

 もうなんの悔いも未練もなかった

 それが炎天下を歩くことだった。

 

 

*二〇一八年九月四日、台風二十一号による高潮で、芦屋浜周辺が浸水した。幸い我が家は難を免れたが、数多くの家が床下浸水の被害にあった。中には、床上浸水までの被害も出た。

 上掲の写真は、二〇一九年の芦屋浜の堤防をスマホで私が撮ったものだ。この古い堤防は高潮対策のため、この年の十一月ごろから改修工事が着工され、現在はまったく新しい立派な近代的な防潮堤に変身している。しかし、何故か私にはかつて亡妻や亡犬ジャックと遊んだ昔の堤防が懐かしく、今でも眼前に浮かんでくる。