芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

「布」その1

先田督裕さんから戴いた同人誌「布」をいま読んでいます。

小網恵子さんの「ぬばたまの」はおそらく枕詞になって「夜」や「夢」のなかへ散らばってゆく。他人との関係が絶たれて無数のぬばたまの実がそこここに散らばって孤立する、そんな夜の夢がしめやかに描かれている。

寺田美由記さんの「雑踏」は仕事帰りのブラックボックスになったような黄昏から夜にかけてのある時間なのか。この「雑踏」はいわば「死の舞踏」と考えてもけっして過言ではないと思う。

何かこう疾走感というものがある。「休日」、何かこういさかいのようなものがあって、オートバイにまたがって街を疾駆する、そんなスピード感と喪失感とが交錯している何か。そんな「休日」。

「沖の鳥島」はたぶん「沖ノ鳥島」のことだと思う。杜みち子さんのお孫さんの小学生たちが議論するデュアルカードっていったいなんだ、わからなかったからパソコンで調べてみた。僕のような世代ならトールキンの「指輪物語」やラブクラフトの「クトゥルー神話」の小学生向けバージョンなのかと考えてみたりする。この詩は、親子三代にわたる雑談集の一断片だろう。

次は先田さんの詩だが、以前頂戴した彼の詩集を読み直してからにしようと、突然思い立った。次回、「布」その2で彼の詩の感想を。