芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

ボードレールとその周辺

ボードレールについて考えている。1960年代に人文書院から出た全集を第三巻まで読んで、いま、第四巻の美術評論を読みすすんでいる。昔、つまり四十年余り前にこの四巻本の全集を買ったが、第一巻と、第二巻の人口の楽園や短編小説、日記などは読んでみたが、手紙や、二十歳前後の僕には彼の手紙はマザコン程度にしか思い及ばず、第三巻の文学論、第四巻の美術論などはほとんど読まなかったし、また、読もうともしなかったのだが……ところが、思うところあって、詩の化身、ボードレールを理解するため、この全集だけではなく、彼の脳髄に刻まれたであろう作品、たとえばマチュリン、ポー、ベルトラン、ボレル……ニ、三日前にはネルヴァルの「オーレリア」、今夜はノディエの「ステラ または夜の悪魔たち」を読み返してみた。すなわち、僕の脳髄をボードレールの脳髄と数時間交換する実験へ。

しかし、ここでいったん中断する。あしたから十日間、エジプトへ。そこには、五千年、国王の死と再生の厖大な廃墟、二千年、原始キリスト教の異端「コプト」、千数百年、すべてはアラー(神)からアラー(神)へ。あのドラクロアもエジプトに行って変わったな、そんなふうにボードレールは言う。