芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

「リヴィエール」181号を読む。

 永井ますみさんから送っていただいた詩誌を読んだ。

 

 「リヴィエール」181号 発行所 正岡洋夫 2022年3月15日発行

 

 この詩誌は、二十人の詩人の作品二十一篇、八人の詩人のエッセイで構成されている。また、表紙絵は水島征男、表紙の裏に山下俊子の詩「冬」が掲載されている。

 今回注目したのは、二編のエッセイだった。まず、北口汀子の「スピリチュアル・ペイン」の第二回目のエッセイ。第一回目は、リヴィエール180号に発表されている。人間って、個人として考えてみれば、自分の痛みと同じ痛みを決して他人は感じるはずがない、こう思うのが常であるだろう。しかし、このエッセイの著者は、その痛みの中で、その痛みそのものが同時にまた共感・愛・悦びへの道だ、そう語っている。日本流に言えば、地獄即浄土、この世はそういう世界なのだろうか。今後の展開に期待したい。

 もう一つのエッセイ、後藤幸代の「悟れぬ私」に私は注目した。二十六年前に自死した兄を今も著者は、「勝手に死んだ兄を許せないと、どうしても思う。」(本書30頁)。これほどの兄妹愛。こういう表現をすれば著者に礼を失するが、あえて言えば、人間という生命はいかにすばらしい愛の中に存在しているのだろうか。著者の手探りで、たどたどしく、もどかしい文章に心打たれるのは私一人ではあるまい。著者には無礼だが、さらにあえて言えば、まだ悟らなくていい、私はそう思ってしまう。二十六年間、愛を喪失したその痛苦の思いを刻んだ文章、いわゆる愛別離苦をたどたどしく語り続けてほしい。