芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

移動

 足の裏に眼がある。闇の中でも豆電球のように光り、時折まばたきする。右足と左足の裏に一個ずつある。ベッドにあおむけに寝転がってぐっすり眠っているのだが、足の眼はぽっちり開いて、部屋の壁の姿見に映った足の裏を見つめている。
 両手で顔を撫でてみると、眼球がなく、二つの穴が開いている。眼球は身体の内部を足先まで泳いだのか、表面を歩いて足の裏まで到着したのか、わからない。
 ふたたび両手で撫でた時、既に顔は二つの穴だけを残してのっぺらぼうになっていた。鼻と耳と唇とまゆ毛が胸から下腹部の方へつるつる移動していた。