芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

闇の跡

 スポーツカーに乗った男が猛スピードで薄汚れた鉄骨ALC造三階建の建物の壁を駆け上がり屋上の辺りで爆発、炎上している。数秒たつかたたぬか、もう一台やって来て、やはり壁を駆け上がり屋上辺りで爆発・炎上している。こんな狂気が何度も繰り返されていた。

 周知の通り、この狂気の証拠写真の断片が何枚も残されているのだが、その断片の一枚の映像の上に二重写しになってあの女が立っている。彼が十年前まで愛を語り続けたあの女。

 生きる幸せは、夢を見ないことだった。夢を見れば、必ず不幸がやって来るのだった。しかし、わかっているのに、彼は夢を見ていた。

 

 きのうの夜の

 闇の跡