芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

破裂しそうだった

 どうしようもなかった。体が風船になってぷくぷく膨らみきっていた。頭の中でいろんな言葉がどんどん走っていた。走るなと叫んでも、走り続けるのだった。だからどうしようもなかった。彼は自分に言い聞かせていた。頭の中からいくらでも言葉が溢れだして、おかしいなあ。きっとボクは人間ではないんだ。破裂寸前の風船なんだ。言葉だけがいっぱい詰まった風船だ。

 不幸だった。

 こんなつまらない生活とオサラバするのだ。それが一番だ。彼は思いつめた。眠れなかった。違う。もう眠りたくなかった。

 興奮して、このまま死のう。ベッドの上であおむいたまま、何度も、このまま死のう、と彼は口ずさんでいた。

 幸いなことに風船は破裂しなかった。破裂する前に、体の穴から、口や耳やお尻から言葉が流れ出した。風船はしぼみ始めた。