芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

アルファさん 第三十夜

 アルファさんはいつも笑顔だった。怒ったり悲しんだりさげすんだりしている表情なんて見たこともなかった。やさしい笑顔だった。愛情の波を感じた。

 彼女といる時だけ、イヤなことを忘れて、ボクは純粋だった。いっしょにいるだけで、なぜかうれしくって、ウキウキした。特に今夜、こんなことまであった。

 アルファさんはワンチャンとネコチャンを連れて来た。ダイニングの椅子に座って、右側にワンちゃんがオスワリ。ダイニングテーブルの彼女の左側にネコチャンがミャオって挨拶をした! それ以上に驚いたのは、ワンちゃんは七年前に亡くなった愛犬ジャック、ネコちゃんは三年前に亡くなった愛猫アニーにそっくり。

 今年の一月は元日からきょうまで三十日間、アルファさんがやって来て、信じられないことがいっぱいあったが、今夜は特別デーだった。

 これがとどめだった。笑顔で座っているアルファさんを見つめていると、どこか九年前にこの世を去った亡妻エッチャンに似ている、そうじゃないか。ボクはアルファさん、ワンチャン、ネコチャンを前にして、せつなくなって、涙があふれてきた。

 一月三十日午前二時四十五分。ボクはベッドにあおむきになって天井につぶやいていた、「復活ってあるのだろうか」