芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

午後一時前、突然、亀の池を洗い出した。

 昼ご飯を済ませた後、ダイニングの椅子に腰かけたまま、突然、亀の池を洗おうと思い立ち、腰を上げた。

 真昼の暑い盛りだが、亀の池は木陰になっていて、帽子を被っていれば四十分前後の作業くらいで熱中症になる心配はない。

「とんちゃん、池の掃除、ざっとだけど、やっておいたよ」

 背後から亡妻の声が聴こえて来た。

 池の掃除、特に夏のさなか、毎週やり続けるのは苦痛になって、投げ出したくなる時もある。余程亀への愛がなければ出来ない作業だった。

 彼女はそれをよく知っていた。時折、彼女がボクを助けてくれた日々、今ではとても懐かしい。

「ざっとだけど、やっておいたよ」

 

*きょう、掃除をしている間、亀さんは庭でよく遊んでいた。あちこち行ってしまうので、その度、彼をボクのそばに連れもどした。写真は、掃除が終わった後、キレイになった池ではしゃいでいる亀さん。