芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

高階杞一の詩集「夜とぼくとベンジャミン」を読む。

 こんな詩集を読んだ。

 

 「夜とぼくとベンジャミン」 高階杞一著 澪標 2017年7月20日発行

 

 全体が五部に分かれている。いったいどんな詩集なのか、頁を開いてみよう。

 さまざまな言葉の実験室だった。言語前衛劇だ、そう言っていいのかもしれない。

 まず「Ⅰ 土下座の後で」は五篇の作品で構成されている。すべて時代劇のワンショットを描いている。特に江戸の平和な日常世界が中核になってはいるが、この章の最後の五篇目の詩「未練」では、電車の中で武士が若い女の首を落としているシーンが描かれている。超自然界のコメディーだった。

 次の「Ⅱ 夜とぼくとベンジャミン」は六篇の作品が収録されている。行替えの短い詩によってどこまでちょっとオシャレな物語が制作出来るのか、そんな思いが込められた作品群だった。言うまでもなく、この章に収められた作品「夜とぼくとベンジャミン」がこの詩集の書名となっている。「あとがき」にも言及されている通り著書の最も深い思いが込められているのだろう。

 「Ⅲ わたしを流さないで」では四篇の詩が登場する。私は読み進むにつれ、何故かラインで誰かとおしゃべりを楽しんでいる、そんな気持ちがするのだった。

 「Ⅳ 歌のアルバム」では、9月から始まって翌年の8月まで12ヶ月十二篇の詩で構成されている。言葉遊びでどこまでイイ詩を作り上げることが出来るのだろうか。最後にはオチもあって、読者のテーブルにコッテリした言葉料理を置いた。

 最後は「Ⅴ 雨、みっつよつ」、三篇の作品。童話を詩で書いているようだった。あるいは、童話的妄想へ落ちていくひととき。

 全体を読み終えて本を閉じた時、こんな感じだった。軽いタッチでステップしたり、ダンスしたり、たまには、後方宙返りをしてみたり、言葉で。