芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

再会

 資料は三つの山に分かれていて、すべてを受け取るためには三日かかることが分かった。何とか一日で済ますことが出来ないか、三度にわたり打診したが、それは無理だ、とても無理だ、その都度そんな回答が返って来るのだった。

 資料は一つの山だけで数千万円する、それを無償で極秘裏に提供されるのだった。ただ、目撃者がいて通報され現場を押さえられると事件が明るみへ出てしまう。絶対に極秘裏でなければならぬ。そのため、専門家が経営するある料亭を利用することが条件だった。第一回目の受け渡しの料亭の費用が八十万円。二回目は百二十万円。三回目はさらに高額になり百八十万円だった。だが資料の価値から判断するとそれは致し方なかった。

 第一回目の受け渡しの夜が来た。運び屋は女性だった。私にはどこか見覚えのある女。確か……そうだこの女は私と同じ高校の同期生だ! 部屋全体に靄がかかっているため視界ははっきりしないが。……なんだか足もとがぬるぬるする。部屋の畳や壁の漆喰が湿気でじめじめしているのだろうか。暖房が利きすぎて蒸し暑く、湿気が蒸発して部屋全体がじとじと蒸れて、それで靄がかかっているのだろう。

 間違いない同期生の女だ! 文机に似た台を挟んで対面している女。彼女の前にはおそらく資料だろう、灰色の紙のようなものがうず高く積まれている。しかし、ますます全体が湿気でねっとりただれていて、不気味な靄に包まれたままだった。